「古典籍総合データベース」のご紹介 


はじめに

 「古典籍総合データベース」(以下、「古典籍DB」と略記)は、早稲田大学図書館が所蔵する古典籍(貴重書・古書)の全文画像および書誌情報を、広く国内外に公開したデータベースです。ここでは、公開から20年が経つ古典籍DBの歩みを簡単にまとめ、紹介にかえたいと思います。

データベース構築にあたって

 古典籍DBは、2005年に公開を開始しました。当館が所蔵するおよそ30万点の古典籍のなかから、国宝2件、重要文化財5件を含むあらゆるジャンルの資料を、鮮明なカラー画像と詳細な書誌情報でご覧いただけます。
 本データベースを構築するにあたり、計画当初は、古典籍の書誌情報をWINE(当館の蔵書検索システム。Waseda University Information Network Systemの略称)に登録することが主な構想でした。画像は副次的な位置づけであり、書誌に必要な表紙や奥付などのみを撮影対象とする方向で検討が進められていたことは、あまり知られていないかも知れません。当時は一般の和書の情報がWINEに登録され、それに続き古典籍の書誌もWINEに登録されることが求められていたのです。
 しかし、検討を進めるなかで、部分撮影ではなく資料の全文を撮影・公開することに計画を大きく転換し、書誌情報とともに全文画像を公開するデータベースを作成することになりました。自館が所蔵する古典籍を網羅的にデジタル化することは、国内ではまだなかった時代です。インターネットの普及やデジタルカメラでの撮影によるコスト削減が、計画を後押しした要因でもありました。

網羅的なデータベースを目指して

 古典籍DBのプロジェクトは、2005年から5年間を目途に進められました。対象とする資料のなかで優先順位を決め、1年目は書誌作成件数約1万件、撮影カット数約75万カットといった形で作業を進め、点検の済んだものからWINEとのリンクおよびポータルサイトで随時公開していきました。なお、書誌作成については、古典籍の場合は来歴等の違いから同じ版でも個別に採ることや、異名・変名などの関係で作者の同定に時間がかかるなど、古典籍特有の作業が発生しました。このように、古典籍DBを構築する過程で、データベースの根幹として書誌情報の作成も種々検討を重ねながら進められていたことは重要な点と思われます。こうして公開された、あらゆるジャンルの資料を網羅的に収め、発信することを目指した古典籍DBは、当時としては非常に画期的な試みであったと思います。
 プロジェクト自体は4年目の2008年度で一旦区切りをつけ、その後は通常業務のなかで新たな資料が追加されていくことになります。また、プロジェクトが始動し数年が経過したこの頃には、データの蓄積は当然のこととして、いかに古典籍DBの認知度を上げるか、いかに既存のデータを活用するかが課題となっています。特にデータの利活用については、今に繋がる問題とも言えるでしょう。

データベースのさらなる利活用に向けて

 2010年代から現在にかけては、毎年データを蓄積しつつ(2026年3月現在、書誌件数:100,926件、画像件数:62,428件)、2016年からは立命館大学アート・リサーチセンターの「ARC古典籍ポータルデータベース」と連携し、2017年には本学の文化推進部が運営する「早稲田大学文化資源データベース」とのリンクが始まるなど、他機関との連携も視野に入れ業務を進めてきました。また、一部ではありますが、古典籍DBに収蔵された資料画像を使用した研究論文とのリンクもしています。さらに2020年代以降は、一部資料の高精細画像の撮影やIIIFに対応するなど、自館が所蔵する資料のさらなる活用を進めています。
 Digital Humanities(デジタル人文学)の隆盛とデータベースを取り巻く環境が変化する現在、古典籍DBは今後どのような方向へ進むべきなのか。資料の全文画像と詳細な書誌情報という、研究のベースとなるものを整備した古典籍DBは、データの蓄積を続けつつも、その利活用という点で模索を続けています。

【参考文献】

・松下 眞也「「古書データベース」作成へ向けて」(『ふみくら』No.72、2005年3月)
・松下 眞也「古典籍データベース化事業開始」(『ふみくら』No.73、2005年12月)
・松下 眞也「古典籍総合データベースの構築と展開」(『早稲田大学図書館紀要』第53号、2006年3月)
・藤原 秀之「資料保存の一助としてのデジタルアーカイブ-早稲田大学図書館 古典籍総合データベースの事例を通じて-」(『大学図書館研究』第89号、2010年8月)
・ティムソン ジョウナス・山本 さぎり「早稲田大学図書館における貴重資料のデジタル化の取り組みについて~これまで・現在・そしてこれから~」(『ふみくら』No.102、2022年10月)
※上記のほか、各年度(主に2004年度~2009年度)の『早稲田大学図書館年報』における古典籍総合データベースに関する報告を参照。